飲食店営業許可の名義変更はできる?事業承継・譲渡時に必要な手続きを解説
飲食店を家族から引き継ぐ場合や、事業譲渡によって店舗を取得する場合、「今ある飲食店営業許可をそのまま名義変更できるのか」と迷うことがあります。
飲食店営業許可は、店舗そのものに対してではなく、営業者に対して与えられる許可です。
そのため、営業者が変わる場合は、単純に許可証の名前だけを書き換えればよいとは限りません。
親族への承継、個人事業主から法人への変更、居抜き物件の引継ぎ、店舗譲渡、法人同士の事業譲渡などでは、変更届で済むケースもあれば、新たに飲食店営業許可を取得しなければならないケースもあります。
手続きを誤ると、営業開始が遅れたり、許可がない状態で営業してしまうリスクがあります。
この記事では、飲食店営業許可の名義変更ができるケース、できないケース、事業承継や店舗譲渡時に確認すべき手続きについて解説します。
この記事で分かること
- 飲食店営業許可の名義変更ができるかどうかの考え方
- 変更届で対応できる可能性があるケース
- 新規許可が必要になりやすいケース
- 親族承継・店舗譲渡・法人化で注意するポイント
- 営業を止めずに引き継ぐための準備
- 名義変更で迷った場合の確認方法
飲食店を引き継ぐ予定がある方へ
飲食店営業許可は、営業者が変わるとそのまま使えない場合があります。店舗を譲り受ける前、法人化する前、親族へ引き継ぐ前に、変更届で済むのか、新規許可が必要なのかを確認しておくことが重要です。
飲食店営業許可は名義変更できる?
飲食店営業許可は、営業者に対して与えられる許可です。
そのため、営業者そのものが変わる場合は、単純に「名義だけ変更する」という扱いにならないことがあります。
例えば、父親が個人事業主として取得した飲食店営業許可を、子どもがそのまま使えるとは限りません。
また、前の営業者が取得していた許可を、居抜きで店舗を借りた新しい営業者がそのまま引き継げるわけでもありません。
まずは、変更内容が「営業者の情報変更」なのか、「営業者そのものの変更」なのかを整理する必要があります。
「店を引き継ぐ=許可も引き継げる」とは限らない
飲食店営業許可は、店舗設備だけでなく営業者を前提にした許可です。店舗や設備が同じでも、営業者が変わる場合は、新たな許可申請が必要になる可能性があります。
まず確認すべきポイント
飲食店営業許可の名義変更を考える場合、最初に確認すべきなのは、現在の許可内容と今後の営業主体です。
次の項目を整理すると、変更届で済むのか、新規許可が必要なのかを判断しやすくなります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 現在の営業者 | 個人名で許可を受けているのか、法人名で許可を受けているのかを確認します。 |
| 今後の営業者 | 引継ぎ後に誰が営業者になるのかを確認します。 |
| 店舗所在地 | 同じ店舗で営業するのか、移転や別店舗で営業するのかを確認します。 |
| 店舗設備 | 厨房設備やレイアウトに変更があるかを確認します。 |
| 営業内容 | 店内飲食、テイクアウト、酒類提供、深夜営業などに変更があるかを確認します。 |
| 引継ぎ時期 | いつから新しい営業者が営業を始めるのかを確認します。 |
特に重要なのは、営業者が同じかどうかです。
営業者が同じまま住所や屋号などを変更する場合と、営業者自体が別人・別法人になる場合では、必要な手続きが大きく変わります。
通常の変更届については、 飲食店営業許可の変更届が必要なケースとは?手続きの流れと注意点を解説 もご覧ください。
変更届で対応できる可能性があるケース
飲食店営業許可の名義変更といっても、営業者が変わらない場合は、変更届で対応できる可能性があります。
例えば、次のようなケースです。
| ケース | 考え方 |
|---|---|
| 営業者の住所変更 | 営業者自体は同じで、住所だけが変わった場合です。 |
| 法人の本店所在地変更 | 法人格が同じで、本店所在地だけが変わった場合です。 |
| 屋号・店舗名の変更 | 営業者が同じまま、店名だけを変更する場合です。 |
| 法人代表者の変更 | 法人自体は同じで、代表者のみ変更する場合です。 |
| 食品衛生責任者の変更 | 営業者は同じで、食品衛生責任者だけが変わる場合です。 |
これらは、営業主体が同じままで、届出事項の一部が変わるケースです。
ただし、必要書類や提出期限は自治体や変更内容によって異なる場合があります。
食品衛生責任者については、 飲食店営業許可に必要な食品衛生責任者とは?資格・講習・注意点を解説 もご覧ください。
新規許可が必要になりやすいケース
営業者そのものが変わる場合は、変更届ではなく、新たに飲食店営業許可を取得する必要が出てくることがあります。
特に次のような場合は注意が必要です。
個人から別の個人へ引き継ぐ場合
親族間や知人間であっても、営業者が別の個人に変わる場合は、新規許可が必要になる可能性があります。
「親の店を子どもが引き継ぐ」「夫名義の許可を妻名義にする」といった場合でも、単なる名義変更で済むとは限りません。
個人事業主から法人へ変更する場合
個人事業主として取得した飲食店営業許可を、法人化後の会社がそのまま使えるとは限りません。
個人と法人は別の営業主体として扱われるため、新たな許可申請が必要になるケースがあります。
店舗譲渡・事業譲渡で引き継ぐ場合
前の営業者から店舗や設備を譲り受ける場合でも、前営業者の許可をそのまま使えるとは限りません。
居抜き物件や営業中の店舗を譲り受ける場合は、営業開始前に新しい営業者として許可を取得する必要があるか確認しましょう。
法人同士で営業主体が変わる場合
A社からB社へ店舗を譲渡する場合など、法人同士で営業主体が変わる場合も、新規許可が必要になる可能性があります。
合併や会社分割などの場合は取扱いが異なることもあるため、個別に確認が必要です。
営業者が変わる場合は新規許可を前提に確認する
名義変更と考えていても、実際には新しい営業者による新規許可申請が必要になることがあります。営業を始める日から逆算して、早めに保健所へ確認しておきましょう。
奈良県で飲食店営業許可を取得する流れについては、 奈良県で飲食店営業許可を取得するには?申請の流れ・必要書類・注意点を解説 もご覧ください。
居抜き物件を引き継ぐ場合の注意点
居抜き物件では、厨房設備や内装が残っているため、「前の許可をそのまま使えるのではないか」と考えがちです。
しかし、飲食店営業許可は前の営業者に対する許可であり、新しい営業者が当然に使えるものではありません。
居抜き物件を利用する場合は、次の点を確認しましょう。
- 前営業者の許可が残っているか
- 新しい営業者として新規許可が必要か
- 厨房設備が現在の基準に合っているか
- 手洗い設備やシンクの状態に問題がないか
- 内装やレイアウトを変更する予定があるか
- 営業開始予定日に許可が間に合うか
居抜き物件は開業準備を短縮できる一方で、設備が古い、図面と現況が違う、前営業者の許可内容と新しい営業内容が違うといった問題が出ることがあります。
居抜き物件での開業については、 奈良県で居抜き物件を使って飲食店を開業するには?営業許可の注意点を解説 もご覧ください。
営業を止めずに引き継ぐための流れ
飲食店を引き継ぐ場合、問題になりやすいのが営業開始日の調整です。
新しい営業者による許可が必要な場合、許可が下りる前に営業を始めることはできません。
営業を止めずに引き継ぎたい場合は、早めにスケジュールを組むことが重要です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 現在の許可内容を確認する | 許可証、営業者名、営業所所在地、営業の種類を確認します。 |
| 2. 引継ぎ後の営業者を整理する | 誰が新しい営業者になるのか、個人か法人かを整理します。 |
| 3. 保健所へ事前相談する | 変更届か新規許可か、必要書類、施設確認の有無を確認します。 |
| 4. 必要書類を準備する | 新規許可の場合は、申請書、図面、食品衛生責任者関係資料などを準備します。 |
| 5. 申請・施設確認を行う | 管轄保健所へ申請し、必要に応じて施設確認を受けます。 |
| 6. 許可後に営業を開始する | 新しい営業者の許可が下りてから営業を開始します。 |
飲食店営業許可の申請スケジュールについては、 飲食店営業許可はいつ申請する?開業スケジュールと準備の流れを解説 もご覧ください。
事業承継・譲渡時に必要になりやすい書類
事業承継や店舗譲渡で新たに飲食店営業許可を取得する場合は、通常の営業許可申請と同じように書類を準備する必要があります。
また、変更届で対応できる場合でも、変更内容を確認するための資料が求められることがあります。
| 書類・資料 | 確認内容 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 新しい営業者として申請する場合に必要です。 |
| 施設図面 | 厨房設備や店舗レイアウトを確認するために使います。 |
| 食品衛生責任者の資料 | 食品衛生責任者の資格や講習修了を確認します。 |
| 法人関係書類 | 法人で申請する場合、法人情報を確認する資料が必要になることがあります。 |
| 譲渡・承継に関する資料 | 事業譲渡や承継の内容を確認するために求められる場合があります。 |
| 変更届 | 営業者が同じまま届出事項を変更する場合に必要です。 |
必要書類は、変更内容や管轄保健所の運用によって異なることがあります。
事前相談の段階で、どの書類が必要になるか確認しておきましょう。
飲食店営業許可の申請で不備が出やすいポイントについては、 飲食店営業許可の申請でよくある不備とは?補正になりやすいポイントと対策を解説 もご覧ください。
よくある勘違い
| よくある勘違い | 実務上の考え方 |
|---|---|
| 親族なら名義変更だけでよい | 親子間や夫婦間でも、営業者が変わる場合は新規許可が必要になる可能性があります。 |
| 居抜き物件なら前の許可を使える | 前営業者の許可を新しい営業者がそのまま使えるとは限りません。 |
| 法人化は変更届だけで済む | 個人と法人は別の営業主体のため、新規許可が必要になるケースがあります。 |
| 店名変更も名義変更と同じ | 店名変更は変更届で対応できる可能性がありますが、営業者変更とは別の問題です。 |
名義変更で迷った場合の進め方
飲食店営業許可の名義変更で迷った場合は、まず状況を整理したうえで、管轄保健所へ確認することが重要です。
次の順番で進めると、必要な手続きが分かりやすくなります。
- 現在の営業許可証を確認する
- 現在の営業者と今後の営業者を整理する
- 店舗や設備に変更があるか確認する
- 営業内容に変更があるか確認する
- 保健所へ事前相談する
- 変更届か新規許可かを確認する
- 営業開始日から逆算して書類を準備する
保健所相談のポイントについては、 飲食店営業許可の保健所相談とは?事前相談で確認すべきポイントを解説 もご覧ください。
飲食店営業許可の名義変更に関するよくある質問
飲食店営業許可は名義変更できますか?
変更内容によります。営業者が同じまま住所や屋号などを変更する場合は変更届で対応できる可能性がありますが、営業者そのものが変わる場合は新規許可が必要になることがあります。
親の飲食店を子どもが引き継ぐ場合はどうなりますか?
営業者が親から子どもへ変わる場合は、新規許可が必要になる可能性があります。親族間であっても、単純な名義変更で済むとは限りません。
個人事業主から法人化する場合、許可は引き継げますか?
個人と法人は別の営業主体として扱われるため、新たに飲食店営業許可を取得する必要があるケースがあります。法人化前に確認しておくことが重要です。
居抜き物件なら前の営業許可を使えますか?
原則として、前営業者の許可を新しい営業者がそのまま使えるとは限りません。新しい営業者として許可申請が必要になる可能性があります。
店名だけ変える場合も新規許可が必要ですか?
営業者が同じままで店名だけを変更する場合は、変更届で対応できる可能性があります。ただし、必要書類や届出方法は保健所へ確認しましょう。
営業を止めずに店舗を引き継ぐことはできますか?
事前にスケジュールを調整すれば、営業への影響を抑えられる場合があります。ただし、新しい営業者の許可が必要な場合は、許可前に営業を始めることはできません。
名義変更できるか分からない場合はどうすればよいですか?
現在の営業許可証、変更内容、今後の営業者、店舗設備、営業開始予定日を整理したうえで、管轄保健所へ相談しましょう。
まとめ
飲食店営業許可は、営業者に対して与えられる許可です。
そのため、営業者が変わる場合は、単純に許可証の名義だけを書き換えればよいとは限りません。
親族への承継、個人事業主から法人への変更、事業譲渡、居抜き物件の引継ぎなどでは、新規許可が必要になる可能性があります。
一方で、営業者が同じまま住所、屋号、法人本店所在地、代表者、食品衛生責任者などを変更する場合は、変更届で対応できるケースもあります。
営業開始の遅れや無許可営業を防ぐためにも、引継ぎや譲渡が決まった段階で、現在の許可内容と変更内容を整理し、早めに保健所へ確認しましょう。
次に確認したいページ
飲食店営業許可について、申請の相談、基本情報、個別の疑問に分けて確認できます。
飲食店営業許可の名義変更・承継でお困りの方へ
飲食店営業許可では、営業者が変わる場合、単純な名義変更ではなく新規許可が必要になることがあります。親族承継、店舗譲渡、法人化、居抜き物件の引継ぎでは、事前に手続きの整理が必要です。
「親の飲食店を引き継ぎたい」
「居抜き店舗を譲り受けて営業したい」
「個人事業から法人化する予定がある」
「変更届で済むのか新規許可が必要なのか知りたい」
「奈良県で飲食店営業許可の承継手続きを進めたい」
このような場合は、営業開始日から逆算して、保健所相談や申請準備を進めることが重要です。奈良県で飲食店営業許可の名義変更・承継・新規許可をご検討中の方は、行政書士だいとう事務所へご相談ください。
